大切なパートナーの「万が一」に備える
コロナ渦で、病院での面会が厳しくなるなか、
「家族・親族」でないことを理由に、
入院しているパートナーと面会することができなかったり、
手術の立ち会いができないのではないか、など、
以前に増して不安を持たれている同性カップルの方もいらっしゃるかもしれません。
今回はコロナ前、そして感染拡大後のつい最近、
私たちが体験した、
手術・入院を含むふたりの病院における体験談をご紹介したいと思います。
プライバシーに関わる内容のため、あまり詳細に書くことはできませんが、
パートナーに持病があり不安をお持ちの方や、
手術の必要が出てきた方などの参考に少しでもなればと思います。
case①大学病院での入院・手術の立ち会い
3年半前、Yちゃんはある病気になり、手術が必要になりました。
症状が出てから、家の近くの病院に何度か行き、薬を飲んだりしていたのですがなかなか治まらず、大学病院に行き精密検査をした結果、手術が必要、という診断になったのです。
手術について、主治医の先生から詳しく説明を聞く、という日に私も病院へ同伴することにしました。
それまで手術を伴うような大きな病気をしたことがなかった私たちは、どんな手術になるのか、かなり緊張しましたが、同時に私たちの関係をどう伝えるか、についても頭を悩ませました。
残念ながら法的には、Yちゃんの家族でない私。
でもYちゃんの治療方針については、しっかりと私も話を聞きたい。
そんな思いから二人で相談し、「親戚」という形で伝えることにしました。(苦し紛れですね・・・)
当日、担当してくださるドクターに「(Yちゃんのお母さまが遠方に暮らされているため)親戚の私が同伴してきました」と伝えて、治療方針を聞き、手術日程を相談しました。
その日はそれで帰宅したのですが、手術・入院に向けて、病院から貰った書類を色々書く中で、私の署名をする欄に「続柄」というのがあり、またしても二人で頭を抱えてしまいました。
少し考えればそういう書面があることなど調べられたのでしょうが、本当に初めてのことで、想定できていなかったのです。
嘘を書くわけにはいかない。
それから病院に電話し、本当のことを話しました。
病院からは「(最初から)そう言ってくれたらよかったのに」という意外な反応があり、私たちはその次の診察で、主治医へお詫びをしました。
さっぱりとした印象の女性のドクターは、(少しは気を悪くされたかもしれませんが)、私たちがなかなか言えなかったという気持ちを伝えると、責めることもなく、淡々と診察などをしてくださいました。
おかげで、手術に向けた入院日も、その後も私は毎日のように病院へ通い、Yちゃんの顔を見ることができました。コロナ感染拡大前ということもあり、病室に行き、Yちゃんの好きなおやつを届けることもできました。
そして、初めての入院で、勝手が分からず、結局余計な嘘をついてしまいました。。
*****
手術当日は仕事を休み、立会いをしました。
主治医から聞いていた時間よりも手術時間が長かったため、待合室でひとり、祈るような気持ちで待っていました。
手術が無事に終わってから、ベッドに横たわったYちゃんが看護師さんに見守れて出てきた姿はこの先も忘れることはないと思います。
主治医の先生からは、術後少ししてから呼ばれ、手術についての説明を私にして頂きました。
退院日も病院へ迎えに行き、その日は一緒にタクシーで帰りました。こうして入院から手術、退院まで、私はYちゃんのそばにいることができました。
それと、毎日お見舞いにきて色々なお菓子とかケーキを持ってきてくれて、それが1日で一番の楽しみでした!ありがとう!
私たちが用意した「公正証書」
その後、調べてみたら、病院面会や署名については法律に規定があるわけでなく、「家族・親族に限定される病院もある」けれど、それはあくまで病院の「ローカルルール」に過ぎないことを知りました。
先ほどお伝えした大学病院は、そういった「ローカルルール」がない病院だったのだと思いますが、これから歳を重ねる中で、いざ、という時に不安なく、病院へ同伴できるよう、ふたりで前々から話をしていた「公正証書」を作り、色々備えていこうという決意を固めました。
病気や事故で入院、というのは、予期しないタイミングで訪れます。ほんとです。
入院するような病気をしたときは、病院に早い段階で自分の事情を正直に話しておけると安心だなと私は身をもって感じました。
そして、この入院は、人生いつ何がおこるか分からないと、公正証書を準備するきっかけにもなりました。
公正証書
わたしたちの場合、公正証書は、「任意後見契約公正証書」と「共同生活に関する公正証書」の2種類を作成しており、「共同生活に関する公正証書」のほうで、
・療養看護と身上配慮
病気や事故等により医療機関で治療・手術を受ける場合、パートナーをキーパーソンに指定して、立会いや面会、本人に代わって症状や治療の方針等について説明を受ける権限を付与する。
また、自らの意思を表示できない場合、ふだんから知っている本人の意思通りの治療・看護がおこなわれるよう努める。
と定めています。
(「任意後見契約公正証書」には相手が判断能力を欠く状態になった場合、パートナーに代理権を渡すよ、という上記と似た形で、医療機関でパートナーにどのような権利を与えるか、という記述も入れています。)
case②総合病院での診察(治療方針の説明)
この春に受けた人間ドックでYちゃんは、再び精密検査を受けることになりました。
以前手術したのは東京にいた時だったのですが、今回は愛知の総合病院での検査でした。
その検査結果をもとに、今後どのような治療をしていくか、決めていく必要があるとのことで、その際主治医の先生にYちゃんが「次回(同性)パートナーを連れてきてもよいですか?」と話したそうです。
何かあれば公正証書も用意していたので前回より安心感はあったと思いますが、今回の病院(愛知では大きい総合病院)の先生も、書類など必要なく、自然に対応してくださったそうです。
そんなこともあって、初診の時点で私のことを把握してくださっていて、「次回は同性パートナーを連れてきていいですか?」という問いには驚くほどスムーズに了解してくださいました。
「もちろんです。」というお返事の感じだったように記憶しています。
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治療方針を決める日、病院に行くと、事前にYちゃんに聞いていた通り、とても優しく穏やかな女性ドクターが私たちを迎えてくださいました。
そして時間をかけて、丁寧に、私たち二人の顔をしっかりと見て治療方針について話してくださいました。
次回の診察日についても、当たり前のように、先生とYちゃんと私の3人の都合が合う日で設定してくださり、セクシャルマイノリティへの壁を一切感じることはありませんでした。
またこちらでも、よい先生に出会えて、私は心から安心しました。
そして、やっぱり弱っている時に、彼女と一緒に説明を聞けるのは、1人で悩まなくて済むので本当にありがたいなと思います。
Mちゃんと先生とベストな治療法を決めて早く健康になりたいと思います!
健康第一!
Yちゃんと私は「緊急連絡先カード」というのを携帯しており、
事故など万が一のことがあった場合に、
連絡してほしい家族の名前として一番上にお互いの名前を書いています。
急な発病や、災害など、予期せぬことも日常の中で増えてきているかと重います。
そんな「万が一の時に向けた備え」をできる範囲でしながら、
パートナーが苦しい時、大変な状況の時、
誰よりも一番近くで見守っていけますように。
合わせて、同性カップルも、
当たり前の家族として、
病院をはじめ、
どんな場面でも認められる日が早く来ることを心から願います。
毎年ちゃんと健康診断や人間ドックにいこうね。